おまけ
あれから、数日後。
王泥喜は何だかやたらと機嫌が良かった。
自分でも、顔が緩んでいるのが薄々解かる。
そんな中、ふと気付くと、みぬきがじいっとこちらを覗き込んでいた。
「な、何?みぬきちゃん」
「オドロキさん…」
彼女は何だかちょっといつになく真顔で、可愛い顔で、穴の開くほど王泥喜を見て。
やがて口を開いた。
「オドロキさん…パパのこと好きなんですね?」
「……?!ええ、な、な、な…何言って?!」
思い切り図星を突かれて、思い切りうろたえてしまった。
これでは、肯定している以外の何者でもない。
何とか取り繕うと必死になっていると、みぬきはふっと優しい顔で笑った。
「いいんです。みぬきも、オドロキさんと一緒だから」
「え……」
「みぬきも好きだから。パパのこと」
「え…そりゃ、解かってるよ」
「違うんですよ、オドロキさん。みぬき、パパのこと、男の人として好きなんです」
「……!!!ええええ?!!」
「だから、これからは正々堂々、ライバルとして宜しくお願いします」
そう言って、彼女はにっこり笑いながら手を差し出した。
まだ頭が上手く回らない王泥喜だったけど、つい、差し出され手を取って、固い握手を交わしてしまった。
何だか、一番食えないのは、実はこの子なのかも知れない。
「あ!それから、パパには…内緒にして下さいね。ま、内緒にしてなくても、気付くことないと思うんですけど」
「う、ああ…鈍いからな、あの人」
確かに。
今回のことだって、あの人がもっと察してくれていれば…こんなにこじれなかった気がする。
いや、こじれていたのは自分だけだったのだが…。
何と言うか…。
王泥喜が同意すると、みぬきは深く頷いて、心の底から溜息を吐き出した。
「そうなんですよ、パパってば…恋のなんたるかが全然解かってないって言うか…」
「あれ、でも…みぬきちゃん、牙琉検事は?」
「勿論!牙琉検事も大好きです。みぬきの王子様です!」
「そ、そう…」
「何て言ってもみぬき、恋多き年頃ってヤツですから!」
言いながら、にっこり笑ったみぬきの笑顔に攣られて、王泥喜も笑みを零した。
結局。
『パパには内緒ですよ』
みぬきの言葉通り、王泥喜は成歩堂に加えて、みぬきとも共通のヒミツを持つことになった。
いつかこれが又何だか大きな問題に発展するなんてことになりませんように…!!
そんなことを、心から願いつつ。
また、いつも通りの一日が始まった。
END